大阪高等裁判所 昭和53年(ネ)1711号 判決
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【判旨】
二そこで、仮処分執行の維持による責任について検討する。
<証拠>によれば控訴人は、右本案訴訟第一審において、本件土地の占有権原につき、被控訴人村上一郎の代理人であり契約当事者本人でもある被控訴人村上良子が、本件土地の前賃借人訴外久貴治一朗から控訴人への賃借権譲渡を承諾し、控訴人との間で新たに本件土地の賃貸借契約を結んだと抗弁したが、右の抗弁は裁判所に採用されず敗訴したこと、控訴人は右本案訴訟控訴審において、予備的に、被控訴人村上一郎は同人の代理人としての被控訴人村上良子のなした賃借権譲渡の意思表示について民法第一一〇条の表見代理の規定により責を負う旨の主張の付加し、立証を追加したところ、控訴審裁判所は、被控訴人村上良子が被控訴人村上一郎の代理人兼本人として、訴外久貴治一朗から控訴人への本件土地賃借権の譲渡を承諾したもので、被控訴人村上一郎は民法第一一〇条の表見代理により被控訴人村上良子のなした承諾に責を負うと認定して控訴人の抗弁を採用し、被控訴人らが敗訴したこと、被控訴人らは控訴審判決に対し上告し(最高裁判所昭和五二年(オ)第八三一号事件)、上告理由として、賃借権譲渡の承諾を認定した点に経験則違反があること、民法第一一〇条の解釈適用の誤りがあること、審理不尽の違法があることを主張したが、いずれも採用されず昭和五二年一〇月一四日上告棄却の判決が言渡されたこと、前記各判決は言渡し後間もなく被控訴人ら又はその代理人に送達されたこと、本件仮処分執行は訴外吉本製鏡株式会社に対する仮処分執行とともに、本件損害賠償請求訴訟の訴状が被控訴人らに送達された後の昭和五二年一一月一七日ころに至つて解放されたこと、が認められ、右認定を左右する証拠はない。
ところで、仮処分執行がなされた後に本案訴訟において仮処分債権者敗訴の判決が確定したことにより、右仮処分の被保全権利が当初から存在しなかつたとされた場合には、右仮処分の申請、執行、及びその維持は違法なものというべく、他に特段の事情のない限り、その仮処分債権者に過失があつたものと推認するのが相当であること前記のとおりである。もつとも、仮処分債権者において仮処分の申請、執行及びそれを維持するについて被保全権利が存在するものと信ずる相当の事由があつた場合には、当然に仮処分債権者に過失があつたものということはできないが、仮処分の申請、執行着手の段階においては相当の事由があつたとしても、その後にその事由が消滅し、又は新たな事情が発生して仮処分債権者が被保全権利の存在を信ずるについて過失が認められる場合には、その段階以後の仮処分執行の維持は不法行為にあたり、仮処分債権者はその責を負うものである。
これを本件についてみると、本件仮処分決定がなされ、その執行の後である昭和五二年三月三〇日には控訴人の抗弁を認め被控訴人らの本件仮処分の被保全権利の存在を否定した本案事件控訴審判決が言渡され、その頃被控訴人ら又はその代理人に送達され、被控訴人らの上告も同年一〇月一四日棄却されたこと、本件仮処分執行は同年一一月一七日ころに至つてようやく解放されたことは前記説示のとおりであるから、被控訴人らは前記本案事件控訴審判決の送達を受けたときから後は本件仮処分の執行を維持するにつき被保全権利の存在を信ずるについて過失があつたものと推認すべきであり、被控訴人らの右仮処分執行の維持は共同不法行為にあたるものというべきである。
(谷野英俊 丹宗朝子 西田美昭)